「食にまつわるあらゆる社会事象」をまとめた新聞社では、食大全なる連載をスタートさせた。BSE(狂牛病)平成13年発生をはじめとする食に関する様々な社会不安が広がったことをきっかけに検証は始まった。取材によるたくさんの証言から、消費者の一面からは見えていない日本の食卓の裏側を垣間見ることができる。そんな本書である。
今回はその中から、生産、安全基準、情報番組、ダイエットの幻想の観点を切り取って紹介しよう。
食の効率化と合理化が歪めた食卓
食には効率と合理化を求める状況が年々高まっている。ただ健康面から考えて知識を蓄えるとそれがそぐわないことがわかるはずだ。しかし誰もが分かりながら目をつぶっているのが現状だ。「安くてもいい」「安いほどいい」そんな消費者の選択が生産、販売、そして口に入るまでの流れを歪めてしまっている。
効率化や合理化を進めるために現代では、コストの安い海外から輸入を行っている。すると国内の生産者は苦しい立場になる。すると漁業・農業は儲からず仕事が厳しくなる。儲からない仕事に後継者は集まらない。すると廃業や転業していった生産者が増え、国全体の生産量が減る。するとコストの安い海外から輸入量が増えるという悪循環に陥ってしまうのだ。
効率化合理化が進むに従って、買い物シーンも対面から陳列販売に切り替わった。街の商店街での買い物から大型スーパーでの買い物になっているはずだ。すると食に対する体験や知識のない消費者は、これまで商店街で食料を販売する食のプロから教わっていた知識を学べなくなる。すると怪しげな健康情報に簡単に騙されてしまう。
この歪みが貧しい食事をサプリメントで補うという行動に向かわせてしまう。